「きゃあ、ぜんぶたべちゃったのお!」
つれの声がして、また娘がおかしでも食べちゃったのかと思って
聞き流していたら、食べられていたのは自分が夜食用に買ってきたさば寿司だった。
目の前には残念な、食い散らかされた光景がある。
「だから、下においちゃダメなのよお!」
おいちゃダメって、うちには猿でもいるのか。
それにしても、箱の上からビニールで包装されているのを、
どうやって開けたのだろう。
と、そういえば娘は手先が器用だったことを思い出す。
つかんだら決して離さないほどの腕力があるし、指先の力はもっとすごい。
指で紙やビニールを突き破るのを、何度も見たことがある。
「⚪️⚪️ちゃん、すっごーい! うちの娘の1日分くらい飲んでるう!」
ある日、シッターさんの声を聞いて、何ごとかと近づいてみると、
娘がジュースのパックを一気飲みしているところだった。
喉を鳴らしながら、パックの底を180度、天に向けている。
大人の自分にすらできそうもないくらい、屹立させている。
そうして、完全に飲み干すと、
プハーッ、ひときわ大きな満足の声をあげた。
おっさんも顔負けどころか、ある種の清々しささえ漂っている。
そんな娘の、ぱんぱんにはりつめているお腹をなでて
「ここには、なにが入っているの?」
と尋ねると、
娘は、
「アイスクリーム!」
とこたえてくれた。
(内藤まろ)